ワインのボトルのラベルに「オールド・ヴァインズ」や「V.V.」と印刷されているのを見たことがあるかもしれない。それらは樹齢の高いブドウの木を使ったワインを意味します。
では樹齢の高いブドウの木から作られるワインはどんな特徴で、何が良いのか、それらを紹介したいと思います。
「ヴィエイユ・ヴィーニュ(V.V.)」または「オールド・ヴァインズ」は、そのワインのブドウが古い樹から収穫されたことを示すラベルに使用される用語です。
しかし、実は古木と定義するための公式なルールは存在しません。
そのためフランスでは、ラベルに「ヴィエイユ・ヴィーニュ(V.V.)」という言葉がよく使われますが、生産者がいつこの言葉を使うことができるのか定義はなく、生産者が樹齢20年のブドウの木を「ヴィエイユ・ヴィーニュ(V.V.)」とする場合もあれば、樹齢70年以上のブドウの木を「ヴィエイユ・ヴィーニュ(V.V.)」とする生産者もいます。
まずは、ブドウの木のライフサイクルについて簡単に説明します。
ブドウの木は植えてから実をつけるまで3年程度かかり、「成木」になるまではなんと7〜8年もかかります。
また成熟したブドウの木は、12〜25歳と言われています。
さらに「老木」と呼ばれるものは、通常25年以上、できれば50年以上の樹齢のものを指します。
そして興味深いのは、ブドウの木のライフサイクルの中で、熟成したブドウの木に独特の品質を与える変化があるということです。
樹齢の高いブドウの木は、年齢とともに生産性が低下する傾向にあります。そのため、果実の凝縮感が増し、より濃縮されたワインが得られる。
これは、ブドウの木が地表のはるか下から養分や水源を引き出していることを意味します。このため、樹齢の高いブドウの木は、ヴィンテージバリエーション(年ごとの変化)にあまり影響を受けず、風雨や洪水にも強い傾向があります。
未熟なタンニンは青臭く、渋い味を感じることがあります。しかし樹齢の高いブドウの木は、生理的熟度が安定しているため、そのような問題が起こりづらい。
樹齢の高いブドウ畑の管理者は、(ブドウの木が健康である限り)それほど手をかけなくてもよい傾向にあります。ただし、ブドウの木にダメージを与えないよう、十分な注意が必要です。
現存する最古のブドウの木「スタラ・トルタ」は、樹齢400年を超えており、生きている世界最古のぶどうの木としてギネスブックに登録されています。
このブドウの木はスロベニアのマリボルで栽培されており、Žametovkaというスロベニアでは珍しい赤色の品種です。
そのブドウの木から作られるワインは、明るいルビー色で、パックリとした酸味、ラズベリーや赤スグリの香りがあり、アルコールは低めです。また驚くことに、このブドウから作られたワインを購入することも可能です。
樹齢の高いブドウの木のワイン産地として知られる地域はいくつかあります。これらの産地は一般的に、生産者が流行の品種に置き換えることなく、ブドウ畑を撤去しなかった地域の、人里離れたところにあります。
ここでは、知っておく価値のある産地をいくつかご紹介します。
ロディはナパバレーの2倍の広さを持ち、約10万エーカー(40,500ヘクタール)のブドウを栽培しています。この地域は1800年代後半に葡萄生産の中心地であり、ジンファンデルをはじめ、トルソー、トゥリガ・ナシオナル、タナといったユニークな品種が多く見られます。
1970年代、ラングドックはカリニャン種の過剰生産により、「ワインの湖」として知られるようになりました。しかしこの地域で生産されたワインは、そのまま燃料として蒸留されるほど、悪化してしまいました。
そのため国は、農家にお金を払ってブドウの木を引き抜くという大規模な伐採体制を敷き、多くの農家がそれを実行しましたが、皮肉なことに、伐採をしなかった農家からは、今でも最高のカリニャンワインが造られています。
南オーストラリア州は、シラーズやグルナッシュの木がフィロキセラ(ブドウの木の天敵)に感染していないほど隔離されているため、この地域のブドウはフィロキセラに全く感染していない。
この地域には、古代のブドウ畑がたくさんあります。実際、この地域は世界で唯一、公式のオールド・ヴァイン憲章を設けています。「オールド・ヴァイン」(35年以上)、「サバイバー・ヴァイン」(70年以上)、「センチュリオン・ヴァイン」(100年以上)、「アンセスター・ヴァイン」(125年以上)です。
成熟したブドウ畑の恩恵を受けているのは、赤ワインだけではありません。サントリーニ島では、珍しいアッシルティコというブドウの木が地面すれすれに伸びて、奇妙な花輪のような形をしているのを見ることができます。
このブドウは、ブルゴーニュの白ワインに似た「ニクテリ」と呼ばれる樽香のある珍しいワインに使われることがあります。
高樹齢のブドウから作られるワインは一般的に深みと複雑さがあり、深い味わいだと言われています。
高樹齢の木からなるブドウで作られるワインは、その生産量の少なさから必然的に値段が高いものが多いです。
しかし、その長い歴史から引き出される複雑な味わいは、長期熟成されたワインと似た、若いワインには味わうことができない深みがあります。
今回は日本で手に入る、比較的コストパフォーマンスが高い高樹齢木のワインを紹介します。
フランス・ブルゴーニュの古樹のピノノワールを100%使用した赤ワイン。
古樹ならではの凝縮感のある豊潤な果実味を感じられ、香りはブラックチェリー、ブラックベリーやスパイス、甘草などの深くて複雑。なめらかなタンニンと力強い野性味と豊かな果実味とエレガントが両立する逸品です。
フランス・ブルゴーニュの古樹シャルドネを100%使用した白ワイン。
レモンやグレープフルーツなどの柑橘類に、黄桃、アプリコットの様なボリュームのある果実の香りで、バニラのフィニッシュ。ムルソーの味わいが一番よくわかるといわれるが、それは古樹ならではの特徴だろう。
ドメーヌ・トゥーロ・ジュイヨ メルキュレ・ルージュ 2019
フランス・ブルゴーニュの古樹ピノ・ノワールを100%使用した赤ワイン。
フランボワーズ、スミレ、プラムなどの果実味で、ジューシーでなめらかな舌触り。酸は穏やかだが、力強い果実味が味わえる。
フランス・ブルゴーニュの樹齢25~35年のピノ・ノワールを使用した赤ワイン。高齢樹のワインを初めて飲むには、コスパが良い一品。
カシス、赤スグリ、プラムを思わせる、凝縮感ある香りが特徴のワインです。味わいのバランスが良く、ほのかに感じられるオークの香りがフィニッシュのエレガントな赤ワイン。
果実味は少ないが、ミネラルのアロマがより強く感じられる。口当たりは滑らかで、酸味のあるレッドチェリー、新鮮なイチゴ、バニラのヒントがある。
味わいはスパイシーで、ミントやタバコの香りのある野生的なニュアンス。骨格がよく、熟成能力も高い。
樹齢の高いブドウの木から作られるワインは、複雑でエレガントな味わいを特徴とする、歴史が凝縮されたワインです。
生産量が少なく、貴重なものですが、一度味わうと若いブドウから作られるワインとは全く違った深みのある味わいを楽しむことができます。
ぜひこちらの記事も参考にして、素晴らしいワインを素晴らしい食事とのペアリングで味わってみてはいかが。